いささか、旧聞だが、Winnyの作者、金子勇氏の無罪判決が、
先日、最高裁判所の小法廷で4対1の多数で決定した。
毎日新聞の記事→http://mainichi.jp/select/biz/it/news/20111221k0000m040029000c.html

Winnyの事件を語るに当たって、様々な意見があるが、
少なくとも「Winnyを悪用したウイルスによる情報漏洩」といった
直接的な問題以外の物を挙げ始めると、話の本質が見えなくなるので、その辺は注意。

その上で、今回の裁判の要点をまとめると。
・Winnyというファイルを効率よく共有・配信する仕組み(*1)を実現するソフトを金子勇氏が作った
・Winnyを使って著作物を、著作権者の許可無く、広く公衆に配信した人が居る
という、事実がまずある。

その上で
・金子勇氏はWinnyを提供し違法なファイル共有が行うための幇助をした
という裁判だ。

というのも、
・既存の著作権の概念を変えるといった内容の金子勇氏の発言。
・Winnyの開発の発端となったファイル共有システムもまた、違法なファイル共有が横行していた
といった、状況証拠から、違法行為のためにソフトを開発したとして、幇助罪を適用するという話である。

その上で今回の判決を見てみよう
小法廷は、<略>適法にも違法にも利用できるウィニーを中立価値のソフトだとした上で、「入手者のうち例外的といえない範囲の人が著作権侵害に使う可能性を認容して、提供した場合に限ってほう助に当たる」との初判断を示した。
いうまでもなく、この点が重要だ。

つまり、今回のWinnyの判決が無罪になったというのは
金子勇氏が、「多くの利用者が違法なファイル共有を容認していた」という点を、
検察側が立証出来なかったから、無罪と成ったわけである。

もし、これが立証出来ていたら、有罪になっていたとも言える。

また、同じ無罪の2審判決が破棄されているのも注目すべき点だ。
2審では、著作権侵害の幇助は限定的な範囲でしか及ばない
(見知らぬ人の違反は幇助できない)ということに立脚して無罪判決だ。

一方の最高裁判所では、
直接的な関与が無くても、一定の条件を満たせば、
見知らぬ人物の著作権法違反に対する幇助は成立するという論になっている。

いずれにしても、Winny事件により、この線引きが明確になったたという意味では、
一歩前進といえるかもしれない。

(*1)効率よく情報を共有・配信する仕組み自体は、
  金子氏オリジナルではなく、いろいろなところで使われている。(Skypeが好例。)
  Winnyはその仕組みを、ファイル共有という形で実現化したソフトの1つに過ぎない。